調査研究コラム

#015 文化財データベースについて 藤谷 誠

1 はじめに
 平成13年度福島県文化財センター白河館まほろんの設立に伴って、そのホームページ上で文化財データベースが公開された。

 その設計、運用に携わったものとして研究紀要2001~2003に渡って、構造概要等について報告した。ここでは、再度それらの報告に基づいて、文化財データベース全体について簡単にまとめてみたい。

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福島県文化財センター白河館まほろん

白河館は、福島県教委で実施(委託を含む)した発掘調査によって得られた遺物資料や写真資料を保管し、それを利活用する施設である。これら実物資料以外のそれらに関連する情報についても等しく保管し、活用することを目的としてデータベースを設計した。

 また、その基本的理念として、文化財は国民共有の財産であるため、その情報についても同じように国民共有の財産であり、広く一般に対して公開する必要があるといった考え方で対応していくこととした。

2 データベースの構造
 データベースについては、レーショナルデータベースマネージメントシステム(RDBMS)を採用した。

 RDBMSは、データを定義する論理設計とデータそれ自体が独立しており、それを動かすソフト処理の設計も容易であることから、現在も主流なデータベースシステムとなっている。

 RDBMSは、データ更新頻度が高い数値処理が中心の金融分野での業務等にも活用されているが、文化財データベースでは、一度作成したデータについては、基本的に更新する部分はほとんど存在せず、そのままデータが追加されるシステムとなっている。

 業務系のシビアなトランザクション処理等を見据える必要がなく、RDBMSの中でも比較的平易なシステムとなっている。

 論理設計は、データ正規化作業とデータ構造の定義作業を行った。その設計図は別図1に示した。

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別図1 文化財データベースER図

これらの中には、設計時に作成したものの貸出し閲覧関係の表などの、実際には使われていない表も含まれている。設計図にも示したとおり、データベースの基軸となっているのは調査内容を示した調査台帳表である。

 これを基本として、それに付随する遺物や写真が検索可能なシステムとなっている。アプリケーションは、C+とVB及びPerl(プログラム言語)で作成されている。

 検索については、結果をURLとして出力する仕様となっている。これにより、検索結果を元にした新たな簡易検索システムを構築することを容易としている。(文化財データベース>簡易検索)

 入力については、VBによって専用の入力システムが構築されており、入力エラーのCSVファイルが吐き出され、それを再度修正、再入力するシステムとなっている。

 また、特にこのデータベースを構築する際にこだわったのが、検索結果のダウンロードである。表については、CSVファイルとして、画像については、高解像度JPEGファイルとしてダウンロードが可能な仕様となっている。

3 各データベース
 文化財データベースは、複数の表から構成されている「遺跡データベース」「遺物データベース」「遺物写真データベース」「写真データベース」「文献データベース」の6のデータベースからなる。

 遺跡データベースは福島県遺跡地図を元にした県内の遺跡の基本台帳データと調査内容を記した調査内容データ及びそれに付随する遺構のデータからなる。

 調査内容データは現在報告書の巻末に添付する報告書抄録と近似するが、遺跡表、遺構数表や調査台帳表、発行文献表などより詳細な各種データから構成されている。最新の調査成果についても、報告書抄録などを元に随時更新することができる。

 遺物データベースは、遺物基本表と数値表からなり、遺物の種類、出土場所、数値などから検索することが出来、現況でのデータ数は約25万件である。

 報告書に図が掲載されているものは、実測図(拓本を除く)が表示され、それをダウンロードすることが可能となっている。収録点数が膨大なため、検索条件を絞り込むのに多少難点があるかもしれない。

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文化財データベースのサイト

遺物写真データベースは、遺物データベースから派生して後日、再設計し実装したものである。

 遺存状況の良好な遺物について新たに写真を撮影し、様々な項目からデータ検索を可能とし、写真についても高解像度JPEGファイルとしてダウンロードすることが可能となっている。

 収蔵してある実物資料の貸し出しや、館内展示などで利用するのに便利なシステムとなっている。写真データベースについては、発掘調査で撮影した種々の写真データについて検察できるシステムとなっている。

 写真のデジタル化については、文化財センター設立以前から、報告書に掲載された写真のカラーリバーサルフィルムのデジタル化を実施しており、それらの蓄積したデジタル資料を検索できるシステムとなっている。

 現在、デジタル写真の隆盛により、発掘調査で使用しているフィルムについても、今後の継続的な生産が危ぶまれる事態となっている。写真データベースについては、このような事態にもデジタル画像のリサイズで対応可能となっている。

 文献データベースについては、白河館収蔵の文献資料についての情報を公開しており、文献の閲覧等にスムーズに対応可能なシステムとなっている。

4 今後について
 文化財データベースを構築・公開して、既に13年の年月が経過している。

 基本的な設計部分には手をつけることが出来ないが、データ検索結果のURLを吐き出すシステムとなっているので、更に他のシステムとの応用について柔軟に対応していければと考えている。

<参考文献>
2002年 藤谷誠「文化財データベースについて -その1 基本構造と遺跡データベースについて-」『福島県文化財センター白河館研究紀要2001』福島県文化財センター白河館
2003年 藤谷誠「文化財データベースについて -その2 遺物データベースについて-」『福島県文化財センター白河館研究紀要2002』福島県文化財センター白河館 
2004年 藤谷誠「文化財データベースについて -その3写真と文献データベースについて-」『福島県文化財センター白河館研究紀要2003』福島県文化財センター白河館