前田遺跡
- 調査期間
- 平成30年10月~令和元年12月(予定)
- 場所
- 伊達市川俣町小綱木字前田
- 該当時代
- 縄文時代中期~晩期、奈良・平安時代
- 調査原因
- 国道114号(山木屋Ⅰ工区)改良工事
前田遺跡は、広瀬川支流の高根川右岸に形成された段丘上に位置しています。以前から土器や石鏃が採集される土地として知られていました。発掘調査は平成30年7月から行い、昨年度の調査では縄文時代中期後葉、縄文時代晩期前半、平安時代の人びとの生活のあとが発見されました。出土遺物には縄文時代中期~晩期の土器や石器、土偶などの土製品、石剣や玉などの石製品に加え、縄文中期の漆塗り土器や木製品が特筆されます。
縄文晩期前半(約3,100年前)では、25基の土坑が狭い範囲からまとまって検出されました。これらの土坑はドングリなどを貯蔵した穴と考えられ、底面に敷かれた落ち葉の上にはコナラやナラガシワのドングリが見つかっています。
縄文中期後葉(約4,700~4,500年前)では、調査区を北東から南西へ走る流路の跡が発見されました。大木8b式~9式土器が多く出土するこの流路跡からは、容器や弓、石斧柄、杖状製品といった木器のほか、おびただしい量の加工された木材が見つかっています。木器や土器の中には赤色や黒色の漆が塗られたものも多く、当時の人びとの色彩感覚には目を見張るものがあります。そのほか、竹などで編まれた編籠や敷物、またクルミ・トチノキなどの種実や昆虫、キノコ類といった当時の遺跡周辺の植生や自然環境を知る手掛かりとなる自然遺物も豊富に出土しています。
今年度の調査では、昨年度調査区の東側、高根川上流の方面へ調査区を拡張し、引き続き調査を行っていきます。
[写真1]調査区遠景(上が東)
[写真2]流路跡の木質遺物出土状況
[写真3]漆塗り弓の出土状況
[写真4]出土した木胎漆器と漆塗り土器
4月
季節外れの雪が舞い散るなか、今年度の調査を開始しました。昨年度に引き続き、調査1区の縄文時代中期後葉の流路跡を調査しています。
現在も地下水の通り道となっているこの流路跡は、雨や雪が降るとすぐに冠水してしまいます。今年度調査は、冬を越して溜まりに溜まった水を排水するところから始まりました。
排水作業が終わり、縄文時代中期の土を掘り下げると、さっそく容器や石斧柄などの木質遺物が出土しました。容器の突起と考えられる漆塗りの木器も見つかっています。水を含んだ木質遺物は傷つきやすいため、注意深く土を取り除き、竹べらや竹串、霧吹きなどで形を出していく地道な作業が必要となります。
[写真1]1区の調査風景
[写真2]石斧柄の出土状況
[写真3]赤漆が塗られた木胎容器の突起
[写真4]木胎容器(浅鉢)の出土状況
5月
調査2区の表土剥ぎを開始しました。調査2区は調査1区の東側、高根川をややさか登った地点にあたります。表土の直下より縄文時代後期の埋甕(写真1)が5基見つかりました。いまのところ住居跡は見つかっておらず、上記の埋甕は屋外に設置されたものと考えています。周辺からは縄文後期前葉の土器片が多く出土しています。
調査1区の調査では、引き続き流路跡の調査を進めています。漆器(写真3)、弓などの木製品(写真4)、漆塗りの土器(写真5)、かごとみられる編物(写真6)などが見つかりました。
[写真1]調査2区 埋甕の出土状況
[写真2]調査1区 流路跡の調査風景
[写真3]赤と黒で塗り分けられた木胎漆器
[写真4]弓の出土状況
[写真5]漆塗り土器の出土状況
[写真6]編組製品の出土状況
6月
調査1区では、梅雨空(排水)に悩まされながら流路跡の調査を進めています。木器や加工材、編組製品が続々と見つかるなか、ほぼ完全な形を保った木胎漆器の浅鉢(写真2)が出土しました。編組製品は脆く壊れやすいため、大型のものはウレタンで固定して土ごと取り上げました(写真5)。
調査2区は表土剥ぎと遺構検出作業を続けています。屋外埋甕が9基、また複式炉を伴う竪穴住居跡(写真6)が見つかりました。
[写真1]調査1区の調査風景
[写真2]完形の木胎漆器(浅鉢)が出土
[写真3]内面に渦巻きが描かれた漆塗り土器
[写真4]大木9式土器と木胎漆器が出土
[写真5]ウレタンによる編組製品の取り上げ
[写真6]調査2区 複式炉の検出状況