■本年度のおでかけまほろん■
本年度のおでかけまほろんは、昨年度に引き続き20回（21校）実施しました。ご利用いただいた団体は全て小学校で、地域別では相双が２ヶ所、県北が３ヵ所、県中が９ヵ所、県南が１ヵ所、会津が４ヶ所、南会津が２ヶ所となっています。（写真は南会津町上郷小学校）
体験では、火おこし体験が一番人気で17校で実施しました。勾玉づくりは８ヵ所でほぼ半分の学校が実施しました。他には、弓矢体験や変わったところでは、学校との協議で凧づくりを行ったところもありました。
おでかけまほろんでは、出来る限り各学校の近くや地方から出土した収蔵資料を持っていって、実際の土器に触れてもらう体験を行っています。また、遺跡地図から学校の身近にある遺跡をピックアップして、地域の歴史のお話をするようにしています。
子供達も身近なところに先人の生活の痕跡があることや、持って行った土器の大きさや造形を実際に触れて確かめてみて、とても感激したようすでした。
来年度も20校で実施し、１月末に案内を送付する予定ですので、是非お申し込みください。
■体験学習■
「まほろん森の塾」とは、年間を通じて昔の生活全般についてひろく体験しようという、まほろん最大の体験講座です。今年は「古代の生活を体験しよう」という目的で、古代米づくりをはじめ、それを使った料理や、勾玉やガラス玉といった体験活動を行なってきました。
昨年来、塾生やまほろん職員の間には、根強い「塾長は雨男だ」という説がありました。そのせいかどうかは不明ですが、活動日のほとんどは雨でした。しかし、そこは仕事大好き六期生、雨で全身泥まみれになりながら稲の世話をし、秋には記録的な大豊作になりました。野外のイベントだけでなく、ものづくりにも積極的で、古代の食器やアクセサリーづくりなどでも、大人顔負けの作品ができました。そんなみんなの心意気に打たれてか、森の塾最大のイベント「春のお泊り会」と「収穫祭」の時だけは、雨も遠慮してくれたようです。このふたつのイベントでは、自分たちの食事を作るという仕事がありますが、塾生たちは次第に自分で仕事に責任を持つようになり、鍋奉行ができ、焼肉屋ができ、配膳係りが自然に生まれていきました。そして、夜のお泊りの前には、不安なようすの年下の塾生に、年上の塾生たちが連れ添ってあげていたり、大人の私たちですら感心させられるような、思いやりに満ちた姿が見られるようになりました。
まほろん森の塾では、学年の違う子供たちが一緒に活動します。まほろんの職員は、その手助けをしますが、決して全てを代ってはくれません。その中で、自分の立場を自覚し、責任を感じ、他人を思いやって行動することを覚えるのでしょうか。六期生たちの成長には、目を見張るものがありました。
また、来年も新しい塾生がやってきます。森の塾は、塾生にとってだけでなく、まほろんの職員にとっても、新しい発見をもたらしてくれる体験であるといえます。
でも、活動日に雨だけは降らないといいなあ…。
今回は、11月18日に行われた実技講座「古代の染色にちょうせん」についてご紹介したいと思います。
奈良東大寺の正倉院に残された様々な宝物からも、日本の染色技術は奈良時代には完成していただろうと考えられています。今回の実技講座では、その正倉院に収められた布にも見られる茜（あかね）染めに挑戦しました。布地には絹を使って、絞り染めの技法を使って実際に体験していただきました。
茜染めから生み出される茜色とは、アキアカネ、アカネグモなど日本人には馴染み深い、少し黄色みがかった濃い赤色です。例えば、日本の国旗の日の丸の部分にみられるような赤色、そんな色を思い浮かべてみてください。赤色の染色には、他にも紅花（べにばな）染め、蘇芳（すおう）染めなど、いくつかの方法が知られています。染色材料による色調や濃淡によって、同じ赤色を示すことばでも茜・紅・緋・朱・丹など複数の呼び方があります。
今回の茜染めは、伊達郡川俣町在住の染織工芸家山根正平先生を講師にお招きして、アカネの根を煮出した染液の中に絹の布を浸して簡単な絞り染めを行いました。茜染めに使用するアカネという植物は、小さなハート型の葉をつけた茎に細かいとげのあるツル草で、日本の野山にも自生しています。まほろんの敷地でも、秋口には薄黄色の花をつけたアカネを見つけることができました。昔から私たちの身近にある植物です。
「あかねさす紫野（むらさきの）行き標野（しめの）行き 野守（のもり）は見ずや君が袖振る」
この歌は、万葉集に収められた額田王（ぬかだのおおきみ）が大海人皇子（おおあまのみこ）、後の天武天皇に詠んだ恋の歌です。二人の恋は成就しなかったようですが、染めあがったスカーフの茜色は、そのような万葉人の想いを連想させます。深まりゆく秋の中、参加された皆さんはそれぞれのスカーフの出来栄えに満足いただけた様子でした。
来年は夏の空を連想させるような、タデアイの生葉で浅葱（あさぎ）色を染めてみたいと思います。皆さんのご参加をお待ちしています。
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| ＜上吉田遺跡出土墨書土器＞ |
新編陸奥国風土記
−巻之五 会津郡・耶麻郡その２−
会期：平成19年３月10日（土）〜５月13日（日）
会場：まほろん特別展示室
入館料：無料
「新編陸奥国風土記」も今回で第６回を迎えます。今回の展示では「巻之五会津郡・耶麻郡その２」として、会津の古墳時代〜奈良・平安時代を中心に紹介します。
会津若松市の駒板新田横穴群は、この地に葬られた人々の1,400年前頃の共同墓地と考えられます。綿々と百数十年に渡って作られた横穴。一つの横穴墓に葬られた複数の人骨。このことは長きに渡って、集落内の強い結びつきを物語ります。
平安時代の遺跡、会津若松市の上吉田遺跡では河川跡から約700点にもおよぶ墨書土器が出土しました。穢れを清める川と土器に書かれた106種の文字。火を灯した灯明皿…。そこでは、何らかの祭祀が行われたのでしょう。一文字一文字から、いにしえ人の祈りや思いが伝わってきます。
屋敷遺跡は、有力者が住んでいたと思われる掘立柱の建物からなる集落跡です。区画された溝。規格的な建物の配置。付属する井戸…。一般の集落跡とは異なります。遺跡からは、「大私（おおきさい）」と書かれた土器が見つかりました。これらの建物の主だったのでしょうか。また、出土した土器の多くが会津若松市の大戸古窯跡群製で、建物の主「大私氏」が注文したのでしょうか。
土器・文字・祭祀…。人やモノ、そして近隣だけでなく中央の文化もが行き交う接点であった会津。そこにはこれまでと違った人々の暮らしが展開されます。文字としてきちんとした記録が残っていない時代を、豊富な考古資料によって読み解く楽しさを、ぜひ来館された皆様にも味わっていただきたいと思います。
なお、ちょうど一年前に当館で開催された『新編陸奥国風土記巻之五 −会津郡・耶麻郡その１−』を、福島県立博物館で開催されます。是非、合わせてご覧いただければと思います。
中田横穴出土馬具の復元３
いわき市中田横穴出土馬具の復元成果について、最終回の今回は完成した鞍について紹介します。
実際の復元作業は、鞍の設計図作成から始めました。鞍を構成する前輪（まえわ）・後輪（しずわ）・居木（いぎ）などは木製であったためか、調査では確認できませんでした。このため、出土した磯金具（いそかなぐ：鞍の前輪・後輪を飾る金具で鉄の板に銅板を被せ、金メッキしている。）を基に、鞍の大きさを推定しました。
特に、磯金具の規模（主にその幅）から、前輪と後輪を構成するものを種分けし、群馬県綿貫観音山古墳出土の資料を参考にして、前輪・後輪の規模を推定しました。
居木の構造や規模については、当館保管の笊内37号横穴墓の復元品を参考にしつつ、福岡県福岡市元岡・桑原遺跡群出土居木(2003 福岡市）に類似させたものとしました。
鞍及び居木の樹種は、前述の群馬県綿貫観音山古墳の出土事例に合わせ、鞍はナラ材、居木は桂材としました。また、仕上げの装飾は、生漆に松煙（松のスス）を混ぜた黒漆を、木質部表面に染みこませる“拭き漆”法で行いました。
この他、磯金具を留める鋲（びょう）は、鋲の大きさ、鋲針の長さ、穿孔間隔などは出土した資料と同じものとしましたが、鋲頭の規模や穿孔間隔が不規則であり、これが前回お話しした中田横穴出土馬具の“不揃いさ”です。使用した鋲の数は、合計112個となりました。
さて、実際に組み立ててみますと、写真に示しましたように、個々のパーツ作成で意識していた鋲の大きさや穿孔間隔の不揃いさは、全く気になりませんでした。
これが、「金に惑わされる」あるいは「金色の魔力」というものかもしれません。
＜参考文献＞
1990 「日本馬具大鑑 第１巻古代上」日本中央競馬会
2003 「九州大学統合移転用地内埋蔵文化財発掘調査概報２−元岡・桑原遺跡群発掘調査−」福岡市教育委員会
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| ＜復元した鞍とお尻を飾る金具＞ | ＜鞍の構造＞ |
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| ＜体験学習研修アンギンづくりのようす＞ |
亥の年の新春を迎えました。今年も、何卒宜しくお願い申し上げます。
1月20日（土）・21日（日）には、官衙遺跡研究研修を当館にて開催いたします。今回は古代寺院跡がテーマで、磐梯町慧日寺跡・棚倉町流廃寺跡・白河市借宿廃寺跡の調査成果をもとに研修した後に、白河市借宿廃寺跡周辺の現地見学を行う予定です。
１月27日（土）には、入門考古学講座�供嵎‥膰�の宝物」を当館にて開催いたします。今回は『ふくしまの土偶』がテーマで、縄文時代の土偶に関する講義を行い、当館にに収蔵されている土偶を見分・解説いたします。
２月３日（土）には、考古学と関連科学を当館にて開催いたします。日本における土器胎土分析の第一人者である三辻利一氏を講師にまねき、須恵器などの胎土分析の実際や様々な課題についてお話いただく予定です。
２月10日（土）には、入門考古学講座�掘峭邑迭悗斑亙�史研修」を南相馬市博物館にて開催いたします。元野馬追いの里原町市立博物館長西徹雄氏を講師にまねき、双葉・相馬地区の郷土史について、氏が昭和30年代から撮り続けてきた文化財の写真を上映しながら、宇田・行方・標葉・楢葉の歴史についてお話いただく予定です。
２月24日（土）には、専門考古学講座�兇鯏�館にて行います。藤本強当館館長が講師で、今回は「考古学の写真」と題して、考古学の視点からカメラや写真について学ぶ講義です。４×５判の大型カメラの取り扱い方について実習もおこないます。
「シリーズ収蔵品紹介」の第三弾として紹介する遺物は写真の壺です。この灰色をしたやきものは「須恵器(すえき)」と言います。この須恵器の壺が出土したのは1980年のことです。この年、福島県教育委員会は須賀川市塩田にある大久保Ａ遺跡の発掘調査を行いました。この際１基の須恵器を焼いた窖(あな)窯(がま)というタイプの窯跡が発見されました。このタイプの窯は真上から見ると葉巻のような格好の溝を掘り、上を粘土で覆ってやきものを焼いたと考えられています。調査時にはすでに天井は失われていましたが、窯の中からは割れた須恵器がたくさん出てきました。焼成が失敗し、窯ごと廃棄されたと思われます。いったい、この窯に何が起こったのでしょう。そのヒントは出土した須恵器にありました。これらの須恵器は焼きゆがみのため、写真のようにうまく修復できないものが多くありました。このような焼きゆがみはなぜ起こるのでしょうか。高温で焼成中の須恵器は非常に柔らかい状態にあります。そんな時何かの拍子に製品に物があたったり、転げ落ちたりすると簡単に変形してしまいます。また、出土須恵器の中には灰色になっていない生焼けのものもありました。須恵器の焼き方は還元炎焼成といって空気の流入を極力抑え、窯の中を酸欠状態にして高熱を出す焼成方法を用います。このような時、急に外気に触れると割れたり、変色したりします。以上のように、大久保Ａ窯では急激な外気の流入と製品の転倒が同時に起こるような事故が発生したと考えられます。最も可能性が高い事故は天井が崩れてしまうことです。
まほろんには、昨年９月に完成した耐火レンガ作りの窖窯があります。今年はぜひ須恵器や施釉陶器などの高温で焼くやきものに挑戦しようと思っています。もし、まほろん窯で大久保Ａ窯と同じ事故が起きたならと思うとぞっとします。大久保Ａ窯を作った古代人も、さぞがっかりしたことでしょう。
まほろんショップより
現在まほろんショップでは、５周年記念感謝セールとしてお買い得な値段で、まほろんグッズを販売するコーナーを設けています。ご来館時には是非、お立ち寄りください。
開館時間： 9：30〜17：00（入館は16：30まで）
休 館 日： 月曜日（月曜日が祝日・休日の場合はその翌日、ただし夏休み期間中は開館）国民の祝日の翌日（土曜日・日曜日にあたる場合は開館）年末年始（12月28日〜１月４日）
入 館 料： 無料（体験学習は、材料費が必要な場合があります。）
そ の 他： 団体（20名以上）でご利用の場合は，事前にご予約ください。