体験学習 | <苧引き(7月10日)> 衣類の原料は麻類が中心でした。日本で利用されてきた麻類は大麻とカラムシの大きく2つに分けることができます。カラムシと人の関わりは古く、縄文時代草創期〜早期の鳥浜貝塚(福井県)からは種子が発見されており、縄文時代晩期の中山遺跡(秋田県)からはカラムシを使用した編み物が出土しています。弥生時代になると機織りの技術が普及し、タテ糸とヨコ糸が格子状となる平織の布が登場します。東日本の遺跡からの出土例は乏しいのですが、麻類を原料とした布は日常着として普及していたものと考えられます。 奈良時代になると、布も米と同じように税として納められています。絹・綿と区別された「庸布」「調布」は麻織物と考えられ、正倉院に現存するものの中には納められた地域がわかるものもあります。それら麻織物の原料は大麻2割に対し、8割がカラムシです。「日本書紀」にはカラムシ栽培を推奨する記事も見受けられ、需要の高まりが認められます。昭和村では中世以降からの生産の歴史を辿れますが、木綿が庶民の手に入るようになるまでは各地で栽培され、製品化されていました。 さて、今回の実技講座を通して、強く感じたことがあります。春先の畑作り、夏場の刈り取り、苧引き、それから冬場の機織りに向けての糸撚りと、布づくりは1年を通した地道な作業の連続であるということです。特に糸の撚りは、手間と根気が必要です。今回はアンギン台を使用した編み物を作成するため、手で撚りをかけて太めの縄状に仕上げました。それでも半日かけても数mほどしか進まず、肩も目も痛くなってしまいました。作業を終えたあとは糸くずも棄てがたい気がします。 |
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実技講座「カラムシから布をつくろう」 まほろんでは、敷地内で栽培しているカラムシを使用しての布づくりを行っています。今年度も7月10日・8月28日・10月2日の3回にわたり、カラムシから繊維を取り出して糸を撚り、それをアンギン台で編んでコースターなどを作成しました。また、講座には幅広い年齢層の方々が参加してくださいました。 『カラムシ』と聞くと、南会津にある大沼郡昭和村を連想される方も多いようです。昭和村は本州唯一の生産地として、その技術や生産用具が国選定保存技術・県指定有形民俗文化財に登録されています。また、巷ではちょっとした韓国ブームですが、民族衣装のチョゴリにもカラムシを原料とした布が使用されています。韓国では伝統的な生産地が各所にあり、オモニ達が良質なものを織りあげています。 でも、カラムシは決して特別な植物ではありません。イラクサ科の多年草で、生育の良いものは大人の人の背丈よりも大きくなり、シソが大型化したようなイメージの植物です。来館者の方からは、「お盆にはお供え用のだんごをカラムシの葉にのせてたんだよ」とも教えていただきました。私たちの身近にある植物として、ずっと昔から人々の生活に溶け込んでいたものと考えられます。今回はカラムシの歴史について、実技講座を終えた感想も交えながら皆さんにお伝えしたいと思います。 江戸時代になって各地で木綿栽培が盛んになるまで、 <カラムシの刈り取り(7月10日)> |
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まほろん通信14号 1 2 3 4ページ