まほろん通信18号 1 2 3 4ページ

 秋のてんじ案内  
 
 
<馬鈴(中田横穴出土)>

出土した副葬品も、馬鈴(ばれい)や鞍金具(くらかなぐ)などの馬具をはじめ、鉄製の武器・武具、装身具など、実に多彩です。まほろんでは、現在、馬具の復元品を製作するための調査・研究を行っていますが、今回は、その内容の一部についてもあわせてご紹介します。
 同市八幡(やあど)横穴群では、総数7,000点以上の副葬品が出土しています。豊富な副葬品のなかで特筆されるものは、忍冬唐草文(にんどうからくさもん)と呼ばれる文様を透かし彫りにした金銅製品です。この類例は法隆寺(ほうりゅうじ)に伝えられており、いわき地域への仏教文化のひろがりのようすを物語るものとして注目されています。


 鹿島町には、前方後円墳と円墳が分布する真野古墳群という古墳群がありますが、このなかのひとつ、A地区20号墳(前方後円墳)からは、金銅製双魚佩(こんどうせいそうぎょはい)と呼ばれる金銅製品が出土しています。この類例は、奈良県の藤ノ木(ふじのき)古墳出土例など、全国でも数例が知られているにすぎません。
 これらはいずれも、当時の金工技術がいかに優れていたかを物語るものです。秋のひととき、いにしえのすばらしい技の世界をぜひご覧ください。

  ふくしまの重要文化財W
  −考古資料:古墳時代後期の金工品−

会期:平成17年10月1日(土)〜12月4日(日)
会場:まほろん特別展示室
観覧料:無料
 まほろんでは、10月1日(土)から、秋のてんじ「ふくしまの重要文化財W」を開催しています。この展覧会は県内の重要文化財を紹介するシリーズの第4弾で、今回は、高度な金工技術で製作された古墳時代後期(6・7世紀)の金属製品をご覧いただきます。これらは、古墳から出土した副葬品(ふくそうひん)の数々で、県の重要文化財に指定されているものです。
 浜通り地方では、山の斜面に横穴を掘り、そこに遺体を葬(ほうむ)る「横穴墓」と呼ばれるお墓が数多く発見されています。いわき市にある中田(なかた)横穴もこのようなお墓のひとつで、赤と白の顔料(がんりょう)を使って、壁面に三角形の文様が彩色されていることで、全国的に有名な横穴墓です。

<杏葉(中田横穴出土)>

 シリーズ復元展示

綿にてこれを拭いつつ、油を充分に焼切りて仕上げるのである。」と記載されています(『塗物術』岡山秀吉著 大正11年 大倉書店)。
 最後の仮称炭焼き法は、『天工開物』(宋応星著 1673年刊 藪内清訳注 平凡社)の「八鋳造釜」の項の「もし不十分な箇所があれば、すぐに少量の鉄をその上にたらして補修し、藁をぬらして上におさえると痕跡がなくなる。」という文章から推測しました。ワラが燃えるときに出るススが鋳込みの痕跡を消去するのであれば、逆に、ワラや炭を焼いてススを付け、それを蜜蝋で磨いて定着させる方法を考えたのです。この方法に近いものは、鉄釜の仕上げにあり、明治初年頃鉄釜の内部を炭火で焼いて、仕上げる方法が考案されたと考えられています(『日本の伝統技術』小口八郎 槇書店 1975)。
 さて、以上の3つの方法で表面処理した写真が左のものです。微妙な各色の違いがわかるでしょうか。みなさんは、どれが古代の鋳鉄製品の仕上げだと思いますか?。


 <表面処理を行った鋳鉄梵鐘製品>

   鉄製品の仕上げその2

 前回、平安時代の鋳鉄製品(ちゅうてつせいひん)の表面処理についてお話し致しましたが、今回は、処理の最終工程である着色についてお話し致します。当時の方法がいかなるものであったのかは解明されていません。今回行った方法は、いずれも現在行われている鋳金での方法や、文献資料での記載を根拠に推測しました。実際に行った方法は、@漆を焼き付ける(漆焼き法) A油を焼き付ける(油焼き法) Bワラや炭などを燃やしてススを付け、蜜蝋(みつろう)などで磨いて仕上げる(仮称「炭焼き法」)の3つの方法です。
 漆焼き法とは、赤く熱した鋳物製品の表面に生漆(きうるし)を塗る方法で、現在の鋳物師(いものし)さんでも、鉄釜や鉄鍋の仕上げに使われています。過去に遡ってみますと、古墳時代の鉄製甲に黒漆を塗っている例や、正倉院文書に記載されている焼き付け漆の記事、正倉院の刀装具の鉄に黒漆が塗られているものなどがあり、平安時代にまとめられた延喜式(えんぎしき)のなかにも、大刀(たち)や楯(たて)を焼塗漆で仕上げた記載あります。(『伝統的焼付漆技法の研究−文献に見る焼付漆及びその研究の歴史−』中里壽克 平成10年 保存科学第37号 東京国立文化財研究所)
 次の油焼き法は、製品の表面に油を塗り、これを焼き切る方法です。これも、現在でも使用されている方法であり、大正時代の塗料を説明した文献には、「油焼きの法は(中略)、綿にて水油を幾回も塗り、別に新しき

 

まほろん通信18号 1 2 3 4ページ