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<飾履復元品(群馬県谷津古墳)かみつけの里博物館>

まほろん夏のてんじ

 テーマ:「弘法山のよこあな―古代ガラスと象嵌の世界―」
 期 間:7月27日から9月1日まで

 弘法山古墳群は矢吹町の東、阿武隈川を望む台地の崖面に横穴を掘った、今から約千四百年前のお墓です。平成10年度、現在のあぶくま高原道路建設に伴う発掘調査で、8つのお墓の中から武器やアクセサリーが出土しました。

 いにしえのガラス作り
 アクセサリーは勾玉や琥珀玉の他にガラス玉が六百点余り出土し、当時の輝きを今に伝えています。展示では各地のガラス玉作りの関連資料を紹介し、当時のガラス 玉作りの技術に迫りたいと思います。

 弘法山象嵌大刀を復元する
 5号横穴と呼んだお墓からは象嵌大刀が出土しました。象嵌はかたち(象)を嵌めるという意味で、素材に模様を刻み、異なる素材を入れる技術です。この象嵌大刀は、鉄地にタガネで溝を彫り、中に銀線を入れた刀飾り(刀装具)を付けたものです。
 まほろんではこの象嵌大刀と県内の象嵌資料の復元を行いました。これらの復元品を初公開します

 タガネの芸術
 象嵌の出来はタガネによるところが大きいのです。古墳時代はタガネの技術が華開いた時代です。展示ではタガネの芸術品を紹介し、みなさんを繊細な美の世界に招待します。

特別展記念講演会のご案内

<ガラス玉と鋳型(千葉県鶴ヶ岡1号墳)木更津市教育委員 会/象嵌柄頭(弘法山古墳群)まほろん>

<江平遺跡から出土した横笛(下)と復元品(上)>

シリーズ復元展示


江平遺跡から出土した「横笛」の復元製作

 平成11年、石川郡玉川村大字小高の江平遺跡から見つかった沢の跡から竹で作られた「横笛」が出土しました。「天平十五年」と書かれた木簡(木の札に墨で文字を書いた文書)が近くから出土したので「横笛」もほぼ同じ頃のものと考えられます。天平15年は奈良時代の中ごろの年号で、西暦743年です。古代の横笛としては、奈良の東大寺正倉院の横笛がありますが、江平の横笛はこれと同じ頃の国内では最古級の横笛と言えます。
 横笛はバラバラの破片になっており、水を含んでブヨブヨの状態でした。このような遺物を将来に残していくには水を合成樹脂に置きかえて乾燥させる科学的保存処理が必要です。この作業を終えてようやく笛の姿が明らかになったのは平成14年になってからでした。出土した笛は破片を接合しても音は出ません。そこで「まほろん」では、この笛の復元品を作って奈良時代−天平の音 色をよみがえらせようという試みに着手しました。
 製作をお願いしたのは、岐阜県可児市にお住まいの笛師、田中敏長さんです。田中さんは笛の歴史についても深く研究されており、かつて宮城県名取市清水遺跡から出土した平安時代の横笛の復元も手掛けている方です。
 田中さんは、実物の詳細な観察から始めました。材質は今も笛作りで用いられている篠竹(女竹)と最もよく似ていました。割れ口か孔の痕跡か判断するのはひと苦

労です。歌口(息を吹き込む孔)と指孔の位置を綿密に計測し、孔の間隔と数を推定しました。出土した笛は中ほどで折れており、その部分はどうしてもつながりません。その結果、指孔の数は特定できず、5つ以上で5つか6つの可能性が高いという結論になりました。
 観察・計測と復元作業の過程で、今も日本の伝統音楽で用いられている横笛との共通点が見えてきました。横笛には御神楽に用いられる神楽笛、雅楽などで用いられる龍笛と高麗笛、能で用いられる能管などがありますが、指孔の間隔と数から、現段階では神楽笛との関連性 が最も強いのではないかと考えられます。
 6月23日、復元された横笛の演奏会が「まほろん」で開かれました。天平の音色が笛とともによみがえり、玉川村も含まれる古代白河郡の地に響きわたりました。
 横笛の実物と復元品は、6月から来年2月までの文化庁主催「発掘された日本列島展」で全国を巡回しており、来年3月に「まほろん」に戻ってきます。

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